こんにちは。薩摩琵琶奏者の中尾掌水、
ヨガインストラクターのゆうこです。
普段は書籍の編集者として働いています。
数ある琵琶の曲の中から、1曲ずつピックアップして紹介したいと思います。
1回目は「白虎隊」です。時は幕末、福島県は会津藩の物語です。
隊員はわずか16、17歳の少年たち。本来であれば、家族や友だちに見守られ、勉強や遊びに明け暮れる青春の日々を送るはずでした。
それが、戊辰戦争に巻き込まれ、会津藩と主君・松平容保を守るために、筆(勉強の道)を捨て、刀を手に取る運命を歩みます。
「花は桜木 人は武士」
琵琶「白虎隊」はこの一言で始まります。
「ぱっと咲いて散る桜のように、人は死に際の潔く美しい武士が優れている」、ということのたとえです。ただ、その潔く散る武士というのが16、17歳の若者と考えると、ずしりと響く言葉です。
少年たちは城下町の防衛にあたる予定でしたが、敗戦の色が濃くなるにつれ、前線に立たされることになります。ところが、決定的な打撃を受けて潰走。飯盛山まで落ち延びます。
そして、命からがら飯盛山をのぼり、山頂から鶴ヶ城のほうを見やると・・・
「南望鶴城砲煙颺 痛哭呑涙且彷徨 宗社亡矣我事終 十有九人屠腹倒」
この詩吟を、クライマックスで語ります。
飯盛山から南(実際は南西)にある鶴ヶ城を眺めると、城から煙が上がっていた。少年たちは慟哭してさ迷い歩いた。もはや会津藩は降伏した。自害するしか残された道はないと、少年たちは刀を手に取って、“腹を屠る”のです。
この屠る、という言葉もとても重いです。琵琶にはこのように、印象に残る、美しい言葉がたくさん登場します。
私は「白虎隊」を語る際、いつも「自分は16歳のころ何をしていたのだろう」と考えます。とても、自らの体に刀を刺す勇気などありません(今だってありません)。
この悲劇を繰り返さないよう、忘れないよう、私は「白虎隊」を語るのだと思っています。