こんにちは。薩摩琵琶奏者の中尾掌水、
ヨガインストラクターのゆうこです。
普段は書籍の編集者として働いています。
わたしはお酒好きです(好きなのは焼酎、日本酒。最近は樽酒にハマり中)。
ヨガインストラクターとはベジタリアンで、ヴィーガンで、お酒なんて飲まない!なんて清貧な食生活を送っていると思われるかもしれませんが、私は飲みます(節度を持って楽しんでます)。
さて。そんなお酒好きの私が、ぜひ語りたかった琵琶の曲が「黒田武士」でした。
〽酒は呑め呑め 呑むならば 日本一のこの槍を
呑みとるほどに呑むならば これぞまことの黒田武士
この民謡を、聞いたことのある人も多いのではないでしょうか。
黒田武士とは、福岡県は黒田藩の武将・母里太兵衛のこと。酒豪で知られた人物なのですが、使者の役目で出向いた京都の屋敷では、酒を勧められても飲まないようにと、主君・黒田長政(黒田官兵衛・如水の嫡男です)から言われていました。
その屋敷の主・福島正則は、母里が酒好きと聞いて早速、酒宴に誘います。母里は言いつけの通り断るのですが、「黒田武士も大したことないな。敵に後ろを見せるとは」と嘲笑され……。
母里は、直径一尺(約30cm!)もある、三升(一升瓶×3本!!)は入ろうかと思われるほどの大きな盃を3杯も、ぐいぐいっと飲み干します。
「見事!!」と福島は褒美の品を「何でもやろう」と言います。そこで、母里が望んだものは、天皇から下賜され、将軍の足利義昭、織田信長、豊臣秀吉の手を渡って正則に与えられた名槍・日本号でした。
さすがに、ハッと息をのむ正則。今度は母里が「武士に二言はなし!」と、やり込める番です。「もちろん、武士に二言はない!!」と正則は、母里へ名槍を譲ります。
この日本号という名の槍は、今は福岡市美術館に所蔵されています。
黒田家名宝展示―官兵衛ゆかりの資料展示― | トピックス | 福岡市博物館
こちらから写真を見ることができます。柄を含めた総長が321.5センチで、刃の長さは79.2センチ。槍の樋に浮き彫りにされた倶利伽羅龍が美しいです。
そして、「酒は呑め呑め~」ではじまる、今の黒田節の元歌である藩歌「筑前今様」を口ずさみながら、槍を抱えて悠々と帰っていくのです。
大酒のみによって、天下に轟く名槍を手に入れるなんて、酒好きにはたまらない話です。
この名曲は3月26日(土)に谷中の古民家・市田邸さんで開催する「薩摩琵琶を通して味わう 日本の美しい言葉」で演奏いたします。この民謡を知っている方は、ぜひご一緒にご唱和ください(心の中で)!お酒好きな人はもちろん、そうでない方も大歓迎です。
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(2022年3月12日更新予定)