琵琶とヨガがくれたShantiな毎日

Shanti シャーンティとはインドの古い言葉で、平和、安らぎのこと。編集者として働く私が、こよなく愛する琵琶とヨガの魅力を綴ります。

【3/26演奏会プログラム】お酒好きの武将 ~琵琶の名曲紹介④ 黒田武士~

こんにちは。薩摩琵琶奏者の中尾掌水、
ヨガインストラクターのゆうこです。
普段は書籍の編集者として働いています。

わたしはお酒好きです(好きなのは焼酎、日本酒。最近は樽酒にハマり中)。
ヨガインストラクターとはベジタリアンで、ヴィーガンで、お酒なんて飲まない!なんて清貧な食生活を送っていると思われるかもしれませんが、私は飲みます(節度を持って楽しんでます)。

さて。そんなお酒好きの私が、ぜひ語りたかった琵琶の曲が「黒田武士」でした。

〽酒は呑め呑め 呑むならば 日本一のこの槍を 
呑みとるほどに呑むならば これぞまことの黒田武士

この民謡を、聞いたことのある人も多いのではないでしょうか。

黒田武士とは、福岡県は黒田藩の武将・母里太兵衛のこと。酒豪で知られた人物なのですが、使者の役目で出向いた京都の屋敷では、酒を勧められても飲まないようにと、主君・黒田長政黒田官兵衛・如水の嫡男です)から言われていました。
その屋敷の主・福島正則は、母里が酒好きと聞いて早速、酒宴に誘います。母里は言いつけの通り断るのですが、「黒田武士も大したことないな。敵に後ろを見せるとは」と嘲笑され……。

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母里友信像(福岡市博物館蔵)。太兵衛(たへえ)や多兵衛(たひょうえ)は通称です。

母里は、直径一尺(約30cm!)もある、三升(一升瓶×3本!!)は入ろうかと思われるほどの大きな盃を3杯も、ぐいぐいっと飲み干します。

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JR福岡駅前にある母里の銅像です。手に大きな盃を持っていますね。

「見事!!」と福島は褒美の品を「何でもやろう」と言います。そこで、母里が望んだものは、天皇から下賜され、将軍の足利義昭織田信長豊臣秀吉の手を渡って正則に与えられた名槍・日本号でした。
さすがに、ハッと息をのむ正則。今度は母里が「武士に二言はなし!」と、やり込める番です。「もちろん、武士に二言はない!!」と正則は、母里へ名槍を譲ります。

この日本号という名の槍は、今は福岡市美術館に所蔵されています。

黒田家名宝展示―官兵衛ゆかりの資料展示― | トピックス | 福岡市博物館

こちらから写真を見ることができます。柄を含めた総長が321.5センチで、刃の長さは79.2センチ。槍の樋に浮き彫りにされた倶利伽羅龍が美しいです。

そして、「酒は呑め呑め~」ではじまる、今の黒田節の元歌である藩歌「筑前今様」を口ずさみながら、槍を抱えて悠々と帰っていくのです。
大酒のみによって、天下に轟く名槍を手に入れるなんて、酒好きにはたまらない話です。

この名曲は3月26日(土)に谷中の古民家・市田邸さんで開催する「薩摩琵琶を通して味わう 日本の美しい言葉」で演奏いたします。この民謡を知っている方は、ぜひご一緒にご唱和ください(心の中で)!お酒好きな人はもちろん、そうでない方も大歓迎です。

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(2022年3月12日更新予定)