こんにちは。薩摩琵琶奏者の中尾掌水、
ヨガインストラクターのゆうこです。
普段は書籍の編集者として働いています。
実は、2022年1月から朗読の稽古をスタートしました。琵琶は語り文芸なので、朗読の勉強は、きっと琵琶の上達につながると思ったからです。
先生は、朗読の大家・溝上伊都子先生。溝上先生の朗読の舞台を観てから、この先生に教わりたいと決めていました。
その溝上先生の生徒さんたちによる朗読の発表会「春の朗読試演会」は、毎年3月、調布市文化会館たづくり映像シアターで行われています。私も、今年初めて参加しました。
私は、別役実さんの短編「空中ブランコのりのキキ」を読みました。朗読に琵琶を重ねる“中尾仕様バージョン”で、です。琵琶は古典と思いがちですが、意外と現代の言葉・語りにも合うのです。
「空中ブランコのりのキキ」は、”終わりのない芸の道”の神髄をあらわしているようで、非常に興味深く、心に響く物語です。
とあるサーカスで活躍するキキは、世界でただ一人、3回転をできる、大人気の空中ブランコ乗りです。
大喝采の拍手を浴びていつも幸福のなかにいる一方で、「誰かほかの人が3回転をやったら……」という不安をいつも感じています。
サーカスの団長は、「誰かが3回転をやっても、キキは4回転をやればいい」と言います。大衆は本人の努力や気持ちなどお構いなく、平気でそういうこと言うな、ってハッとしました。
物語中盤、実際に3回転を成功させた人が登場しますが、「練習さえすれば、誰でも3回転できるってみんな思っちゃうよ」という、ある人のセリフを見た時にも、同じ感想を抱きました。
キキは「人気が落ちたら、きっと淋しいよ」と言います。「辛い」「悲しい」「イヤだ」という言葉ではなく、「淋しい」という一言を使うところが秀逸です。
そしてキキは、一度も成功していない4回転をやり遂げるために、ある決断をします。それは“芸の鬼”たる決断です。これもまた、芸の道を究めようとする者には響くのです。
これらの“気づき”は、何度も口に出して読むうちに感じるようになったことばかりで、これが作品を読み込むことなんだな、って実感しました。
次回のブログは、「とうとう「壇ノ浦の戦い」の舞台・山口県下関市を訪れる!」です。源平合戦の舞台、平家一門終焉の地、壇の浦を初めて訪れます。(4月8日更新予定)