こんにちは。薩摩琵琶奏者の中尾掌水、
ヨガインストラクターのゆうこです。
普段は書籍の編集者として働いています。
前回のブログに続き、3月9日「薩摩琵琶を通して味わう日本の美しい言葉 in 川越メル珈琲」のレポートです。今回は2曲目「羽衣」を紹介します。
冒頭に、このような語りが登場します。
「浜松風の音に和し 虚空に響く樂の聲 妙なる薫り花降りて 心空なる景色かな」
文字としてみると、意味が何となく分かるのですが、語りだけだとちょっとイメージしにくいかもしれません。
「浜の松がたてる音と風の音が一緒になって聞こえ、天からは音楽の音も響いてきた。何ともよい香りも立ち込めて、花も降ってきた。我を忘れてしまう景色だな」という意味。
天女も訪れるような春ののどかな海岸を、このように描き出すなんて!
私が謡曲らしいなと思うのが「左右さ 左右颯々と」。羽衣を返してもらい、天へ舞いながら上っていく天女を表現しています。
「霓裳羽衣(げいしょううい)の一曲も」という表現が登場します。
マスターは文字の成り立ちから意味を探り、とくに「霓」の文字に注目。
霓とは、虹のことなんですね。中国ではかつて、虹を竜とみなして性別を分けており、雄を「虹(コウ)」、雌を「霓」と呼び分けていたのだとか。
ここから、霓裳羽衣とは、美しい衣裳の羽衣を空に渡る虹のようだと称える言葉なのではないか、と予測。
そして、天女が空高く見えなくなってしまった後の言葉で「波の鼓に松の琴」。
「波うつ音が鼓のように、松のたてる音が琴のように聞こえ、その調べが澄み渡る」という意味なのですが、この情緒あふれる風景を、たったの7文字で表現する、この腕前!謡曲「羽衣」の作者は不明ですが、素晴らしすぎる!
あぁ~日本語って、本当に美しい。とっても勉強になりました。琵琶の語りへの解釈が深まるに違いないです。琵琶を好きでよかった~。
マスターとお客様のお陰様で、薩摩琵琶を通して日本語の美しさを「耳から」「目から」味わえる、噛みしめることのできる唯一無二の演奏会となりました。
撮影すべて:土肥祐治
次回のブログは、「スパイスまみれになる一夜 千駄木・本駒込にあるスパイスバル コザブロさんを紹介」です。(4月6日更新予定)