琵琶とヨガがくれたShantiな毎日

Shanti シャーンティとはインドの古い言葉で、平和、安らぎのこと。編集者として働く私が、こよなく愛する琵琶とヨガの魅力を綴ります。

“どうしよう、めっちゃコーフンする!”という感慨だった、3月9日(土)開催「薩摩琵琶を通して味わう日本の美しい言葉 in 川越メル珈琲」

こんにちは。薩摩琵琶奏者の中尾掌水、
ヨガインストラクターのゆうこです。
普段は書籍の編集者として働いています。

3月9日(土)「薩摩琵琶を通して味わう日本の美しい言葉  in 川越メル珈琲」を開催しました。

東京の谷中では過去3回開催してきましたが、川越メル珈琲さんから「今度、お店でも琵琶演奏会をしましょう」と声をかけて頂き、この企画を川越で開催することになりました。

なぜ、この企画を?といえば、マスターが書道家であるから!
この演奏会は、琵琶のやや難しい言葉のうち、口に出して気持ちよい言葉を解説してから、実際に琵琶演奏を聴いて頂くという趣旨のもの。語りを通して、日本語の美しさを味わってもらえたら、という意図があるのですが、マスターは言葉や文字へのこだわりを持っていらっしゃるので、川越メル珈琲でやるなら、この企画しかない!と思い提案しました。

その結果はというと・・・
率直な感想は “やばい、めっちゃ楽しい! 脳汁出まくり!” でした。

私は琵琶の語りを通して、主に「音としての響き」から日本語の美しさを体感しているのですが、マスターは書を通して、「文字としての形」や「文字の成り立ち」から、日本語の美しさを体感していらっしゃいます。

会場の川越メル珈琲は自家焙煎珈琲の喫茶店

マスターが書き下ろした書(琵琶の語りの一部)をバックに琵琶演奏という、素晴らしい舞台。これは提案してよかった!

私がまず、琵琶の語りを解説。次に、実際の演奏を聴いて頂く。
そして、マスターの解説。という構成にしてみました。

一曲目は「七福神」。
福をもたらす七柱の神様がみな登場する、とても賑やかでおめでたい曲です。

私の好きな言葉は、和歌「永き夜の 遠のねむりの みな醒め 波のり舟の 音の良きかな」
七福神が宝船にのって、ゆったりのんびり帆を進めているという、のどかな景色を思い浮かべます。回文になっていて、室町時代にも記述の残るほど古い和歌です。

「撥の型(かたち)にさも似たる 末広がりや琵琶の道」という締めの言葉も好きです。「末広がり」とは縁起のよい言葉の代表ですが、薩摩琵琶の「撥の型」によく似ているんですね。

薩摩琵琶の語りと音色が邪をはらい、福を呼び寄せますように、という気持ちで語っています。

マスターは、琵琶のテキストにある、えびす様の「夷」という漢字に注目。音は「えびす」でも、文字としては「えびす 夷 恵比寿」といろいろあり、当然ながら、それぞれ由来が異なります。

そして、マスターも前述の和歌を描き起こしてくれました。
「永き夜の遠のねむりのみな」という部分、「の」が続くのです。書として、ひらがなの「の」ばかりだと、バランスがあまりよくない。ということで、それぞれ違う形の「の」を書いてくださいました。やはり、それぞれ成り立ちが違うんですね。その解説も頂きました。

マスター曰く、「漢字とひらがな、両方を入れて、見た目としてのバランスを整えることができるのが、日本語の特徴であり、日本語の美しさを如実に物語るもの」とのこと。それは、アルファベットだけでの英語にも、漢字だけの中国語にもできない。

なるほど!違うアプローチから、琵琶の語り・日本語を捉えることが、こんなにも刺激的とは!

マスターの文字への愛情と知識の深さに、ただただ脱帽でした。それに輪をかけて、お客様の熱意がすごい! 普段から、マスターが開催する「書道部」や「文字カフェ」(コーヒーを飲みながら文字の成り立ちなどを知る会)に参加されているだけあって、日本語愛にあふれています。

私とマスターが「ここの言葉が秀逸」「素晴らしい」と興奮するのに負けじと、お客様も「この言葉の意味は?」「この文字の違いは?」などと積極的に質問を投げたり、メモを取ったりしてくださり・・・熱気むんむんな雰囲気に包まれました。


撮影すべて:土肥祐治

次回のブログでは、二曲目の「羽衣」のレポート、「薩摩琵琶を通して味わう日本の美しい言葉 in 川越メル珈琲 開催レポートvol.2」です。こちらは、謡曲からとられているため、まさしく美しい日本語の宝石箱でした!(3月30日更新予定)