琵琶とヨガがくれたShantiな毎日

Shanti シャーンティとはインドの古い言葉で、平和、安らぎのこと。編集者として働く私が、こよなく愛する琵琶とヨガの魅力を綴ります。

演奏会「薩摩琵琶を通して味わう日本の美しい言葉」レポート①昼の部

こんにちは。薩摩琵琶奏者の中尾掌水、
ヨガインストラクターのゆうこです。
普段は書籍の編集者として働いています。

先週3月26日、2回目となる薩摩琵琶演奏会「薩摩琵琶を通して味わう 日本の美しい言葉」を開催しました。おりしも近くの上野公園や谷中墓地はサクラが満開! 

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演奏会は1日2回公演。昼の部は13時にスタートしました。撮影:土肥裕司

お昼の市田邸は、このような感じです。

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晴れていれば太陽の日差しが縁側に届き、ネコと一緒に昼寝したくなる寛ぎ空間です。

一曲目は「黒田武士」です。舞台は新春の酒宴。大酒飲みによって名槍を手に入れるという、とても賑やかな一曲を最初にお届けしました。二曲目は「蓬莱山」。国歌のもととなった曲で、春の日にぴったりな内容です。市田邸の縁側には、桜の花びらも風に乗って舞い降りてきました。

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「『君が代』の意味を知らなかったのでいい機会でした」というお声も(私も、こんな機会だからこそ調べて知ることができました!)。撮影:土肥裕司

三曲目は、友情出演いただいた冨田露水さんによる「五条橋」です。源義経と弁慶の出会いを語ります。

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男性による力強い語りを堪能いただきました。撮影:土肥裕司

最後は、赤穂義士の討ち入りシーンを語る「雪晴れ」でした。

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赤穂義士の物語は冬の風物詩というイメージですが、彼らの命日(切腹した日)は2月4日。そんなことに思いを馳せながら、彼らの物語を語りました。撮影:土肥裕司

頂きましたアンケートでは、「解説を聞いてからの演奏なので琵琶の内容が分かりやすくなった・情景が浮かんできた」という声を多くいただきました。
これからも、どのような言葉ならイメージしやすくなるか、分かりやすくなるか、模索しながら演奏会の構成を練っていきたいと思います。

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今一緒にお仕事させていただいている方から、うれしいお花の贈り物も。和の雰囲気にぴったり合う上品なアレンジメントでした。

このような情勢のなかご来場いただきましたお客様、体一つで静止画・動画どちらも撮影いただいた上に照明係も担ってくれた土肥様、何度も稽古をつけて頂いた古澤先生。皆様本当にありがとうございました。多くの人に支えられ、2回目の演奏会が開催できました。

次のブログは、「市田邸での演奏会レポート②夕の部」です。昼の様子とはがらりと変わる夕方の公演様子をレポートします。
(2022年4月9日更新予定)

物欲をおさえてくれる魔法の言葉“私は満ち足りている”知足のこころ

こんにちは。薩摩琵琶奏者の中尾掌水、
ヨガインストラクターのゆうこです。
普段は書籍の編集者として働いています。

東京にいると、季節・土地関係なく何でも手に入ってしまいます。だからこそ、ついつい、あれもこれもと欲しくなります。そんなときに、私が思い出すようにしている言葉が「知足」です。

「知足」とは、「足る」ことを「知る」。ヨガ哲学から学びました。日常の勧めや戒めを説いたヨガの教え「八支則」と呼ばれるもののひとつで、サンスクリット語では「サントーシャ」といいます。

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「知足」は禅の言葉として紹介されることもあります。

あれが欲しい。これも欲しい。あの人、○○ができていいな。
――でも、よくよく自分を見直してみてください。あなたは、すでに十分持っていませんか?
――持っていた。これ以上求める必要はなかった・・・これが「知足」です。

つい先日も「知足」のこころで、物欲をおさえました。
私は柑橘類が大好きなのですが、銀座にある熊本県のアンテナショップで熊本県産の柑橘類フェアが開催されていました。「食べたい!いろいろな種類を試したい!!」と気持ちが先走りましたが、ふと思い出すと、実家から熊本県デコポンを5つももらっていたのです。
「家にデコポンが5つもあった。これで十分じゃないか」と冷静になりました。
もし買って来ていたら、何か腐らせてしまったかもしれません。

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このように、ヨガとはポーズをとることや呼吸を整えること、瞑想だけではありません。
「日頃の生活上で、いかにヨガの心を実践するか」
ヨガマットの上にいるときだけに、ヨガを心がけていればいいというのではないのです。ヨガに、こころも救われたなと思うエピソードです。

次のブログは、「市田邸での演奏会レポート①昼の部」です。本日3月26日、上野公園近くの市田邸で「薩摩琵琶を通して味わう 日本の美しい言葉」を開催いたします! 

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その模様を来週アップしたいと思います。(2022年4月2日更新予定)

久しく武器も使われないほど平和な理想郷 ~琵琶の名曲紹介⑤ 蓬莱山

こんにちは。薩摩琵琶奏者の中尾掌水、
ヨガインストラクターのゆうこです。
普段は書籍の編集者として働いています。

君が代は 千代に 八千代に さざれ石の 巌となりて 苔の蒸すまで

“わが君の治めるこの世が、千年も八千年も長く続きますように。
小さな石が大きな岩となって、その岩に苔が生えるまでの悠久の長きにわたって“

言わずと知れた国歌の一歌詞です。古い歌で、10世紀初頭の最初の勅撰和歌集古今和歌集』(紀貫之が撰集)に、「詠み人知らず」として残されています。

薩摩琵琶の故郷・鹿児島の薩摩では、藩主・島津家から下々の民衆まで、この古歌が慶賀の席での定番として愛されてきたのだとか。薩摩伝唱の琵琶歌「蓬莱山」です。

蓬莱山とは中国古代の伝説上の国で、仙人が住み、不老不死の薬があると言われています。「蓬莱山」はそんな理想郷を語る一曲で、日本の国歌の元にもなりました。この琵琶の曲がなければ、国歌は違うものになっていたのかも。

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この夢のような世界・蓬莱山を古今東西の画家は描いてきました。冨田溪仙《蓬莱山図》東京富士美術館

松の枝には、鶴巣くい 巌(いわお)の上には、亀遊ぶ
鶴、亀、松、竹と、とにかく縁起のよい言葉が並びます。

千草萬木、花咲き実のり 五穀は国に満ち満ちて 金殿楼閣、甍(いらか)を並べ 竈(かまど)の煙にぎわいて
”この世のすべての植物は花が咲き乱れ、実りも実に豊かだ。国中には五穀が満ち溢れている。キラキラとして輝かしい家屋からは、かまどの煙も絶え間なくのぼっている(食べ物に困ることもない)。”

弓は袋に、太刀は鞘 諌鼓(かんこ)に、苔は深うして 驚く鳥もなかりけり
”武器である弓は袋にしまったまま。刀も鞘に納められたまま。それくらい戦争や争いがずっと起きていない。諌鼓とは、古代中国で君主に対して諫言する際に打つために設けられた太鼓のこと。この太鼓も苔が生えてしまうほど、長年鳴らされていない。鳥さえも、この太鼓に止まってくつろいでいるではないか…。”

平穏な世の中であることを描写するのに、なんてすばらしい表現が続くのでしょう!この「蓬莱山」こそ、美しい日本の言葉の宝庫と言っても過言ではありません。声に出すと、おおらかで満たされたムードに包まれます。

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ちなみに、さざれ石とはこのような石。小石が長い年月をかけて結びつき、大きな岩になります。まるで成長するかのようなことから、神霊が宿る石として信仰されてきました。よく神社の境内で見かけます。

この名曲も、3月26日(土)に谷中の古民家・市田邸さんで開催する「薩摩琵琶を通して味わう 日本の美しい言葉」で演奏します。春の気配を感じる3月下旬にはぴったりの内容です。市田邸近くの上野公園でも、桜が開花しているかもしれません。

次のブログは、「物欲をおさえてくれる魔法の言葉“私は満ち足りている”知足のこころ」です。
(2022年3月26日更新予定)

活版印刷が大好き! おすすめミュージアム

こんにちは。薩摩琵琶奏者の中尾掌水、
ヨガインストラクターのゆうこです。
普段は書籍の編集者として働いています。

編集者の端くれとして、活版印刷が好きです。そんな活版印刷を体験できるミュージアムとして、飯田橋(私が勤務しているのも飯田橋)に、印刷博物館があります。

定番企画世界のブックデザインはもちろん毎年、観に行きます!日本やオランダ、ドイツなど色々な国の美しいデザインの本を展示していて(ゴム手袋越しですが触って読めます)、とても勉強になります。今年は4月10日まで開催中。
    
そして、最近2021年2月にオープンしたのが、市ヶ谷駅から徒歩圏内にある、市谷の杜 本と活字館です。活字のなりたちから、活版印刷の仕組みを通して本づくりを学べます。

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今も現役で活版印刷を行っているという印刷工房の再現スペース。

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企画展のチラシ、ショップカード、冊子もこのスペースで実際に刷っているそうです。

活字を拾う作業「文選」をバーチャル体験したり、「新刊の雑誌を作りたいという人にどのような体裁の本を提案するか」をクイズ形式で学べたり。ただ展示を見るだけではなく、体感しながら本づくりの過程を学べるので、本好きな人や子どもと一緒に行っても楽しめそうです。しかも入場無料!(要予約)

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文選は印刷博物館のワークショップで体験したことありますが、けっこう重労働。活字を探す際に目も腰も使いますから。

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印刷機上の部分に竹を使っているのが、なんだかいいです。

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活字を模した案内板。細部までこだわっている!触りたくなります。

2階の制作室でワークショップに参加してみました(現在はお休み中)。卓上活版印刷機(テキン)という機械を使って活版印刷を体験します。絵柄やフォント、紙を選んでしおりを作成!

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これが卓上活版印刷機。上の丸いところにインクを付け、印刷します。

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喫茶スペースもあります。秋冬は「秀英初号明朝」というフォントを絵柄にした、編集者心をくすぐる抹茶ラテが飲めるようです。

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CMYKドリンク!なんて、編集者はニヤリとしてしまうメニューも(これは夏季限定)。

実は今、《琵琶奏者/ヨガインストラクター/エディター・ライター》、この三位一体(⁉)な肩書をひとつにした名刺を、活版印刷で制作中です。

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普通の印刷よりちょっと高価ではありますが、やはり活版印刷で刷りたかった。到着が待ち遠しいです。

次のブログは、「争いのない平和な理想郷 ~琵琶の名曲紹介⑤ 蓬莱山~」です。
この曲も3月26日の演奏会で予定しています。美しい日本語の宝庫と言っても過言ではない一曲です。
(2022年3月19日更新予定)

【3/26演奏会プログラム】お酒好きの武将 ~琵琶の名曲紹介④ 黒田武士~

こんにちは。薩摩琵琶奏者の中尾掌水、
ヨガインストラクターのゆうこです。
普段は書籍の編集者として働いています。

わたしはお酒好きです(好きなのは焼酎、日本酒。最近は樽酒にハマり中)。
ヨガインストラクターとはベジタリアンで、ヴィーガンで、お酒なんて飲まない!なんて清貧な食生活を送っていると思われるかもしれませんが、私は飲みます(節度を持って楽しんでます)。

さて。そんなお酒好きの私が、ぜひ語りたかった琵琶の曲が「黒田武士」でした。

〽酒は呑め呑め 呑むならば 日本一のこの槍を 
呑みとるほどに呑むならば これぞまことの黒田武士

この民謡を、聞いたことのある人も多いのではないでしょうか。

黒田武士とは、福岡県は黒田藩の武将・母里太兵衛のこと。酒豪で知られた人物なのですが、使者の役目で出向いた京都の屋敷では、酒を勧められても飲まないようにと、主君・黒田長政黒田官兵衛・如水の嫡男です)から言われていました。
その屋敷の主・福島正則は、母里が酒好きと聞いて早速、酒宴に誘います。母里は言いつけの通り断るのですが、「黒田武士も大したことないな。敵に後ろを見せるとは」と嘲笑され……。

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母里友信像(福岡市博物館蔵)。太兵衛(たへえ)や多兵衛(たひょうえ)は通称です。

母里は、直径一尺(約30cm!)もある、三升(一升瓶×3本!!)は入ろうかと思われるほどの大きな盃を3杯も、ぐいぐいっと飲み干します。

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JR福岡駅前にある母里の銅像です。手に大きな盃を持っていますね。

「見事!!」と福島は褒美の品を「何でもやろう」と言います。そこで、母里が望んだものは、天皇から下賜され、将軍の足利義昭織田信長豊臣秀吉の手を渡って正則に与えられた名槍・日本号でした。
さすがに、ハッと息をのむ正則。今度は母里が「武士に二言はなし!」と、やり込める番です。「もちろん、武士に二言はない!!」と正則は、母里へ名槍を譲ります。

この日本号という名の槍は、今は福岡市美術館に所蔵されています。

黒田家名宝展示―官兵衛ゆかりの資料展示― | トピックス | 福岡市博物館

こちらから写真を見ることができます。柄を含めた総長が321.5センチで、刃の長さは79.2センチ。槍の樋に浮き彫りにされた倶利伽羅龍が美しいです。

そして、「酒は呑め呑め~」ではじまる、今の黒田節の元歌である藩歌「筑前今様」を口ずさみながら、槍を抱えて悠々と帰っていくのです。
大酒のみによって、天下に轟く名槍を手に入れるなんて、酒好きにはたまらない話です。

この名曲は3月26日(土)に谷中の古民家・市田邸さんで開催する「薩摩琵琶を通して味わう 日本の美しい言葉」で演奏いたします。この民謡を知っている方は、ぜひご一緒にご唱和ください(心の中で)!お酒好きな人はもちろん、そうでない方も大歓迎です。

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次のブログは、「活版印刷が大好き!本と活字館へ行ってワクワク」です。
(2022年3月12日更新予定)




インド版“言霊”サンスクリット語の魅力

こんにちは。薩摩琵琶奏者の中尾掌水、
ヨガインストラクターのゆうこです。
普段は書籍の編集者として働いています。

ヨガの教室に出たことのある人は、聞きなれない言葉を耳にしたことがあるでしょう。「ターダ・アーサナ」「ヴィラバートラ・アーサナ」「スーリヤ・ナマスカーラ」といったポーズ名です。
これらはサンスクリット語という、インドの古い言葉。「ターダ・アーサナ」は「山のポーズ」、「ヴィラバートラ・アーサナ」は「戦士・勇者のポーズ」、「スーリヤ・ナマスカーラ」は「太陽礼拝」です。アーサナとはポーズのこと(正確には座法を指します)。
ヨガのポーズは、このように動物や自然の形になぞらえた名前が多く登場します。きっと、動物や自然をよく観察して、ポーズの参考にしたのでしょう。その観察眼がとても興味深いです。

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ちなみに、現代の日常生活では使われていないため、今のインドの方々も読めないそう。

ヨガの教室によっては、このサンスクリット語を使わないところもありますが、私のレッスンでは、サンスクリット語でポーズ名を言うようにしています(一緒に日本語名、英語名も伝えています)。
なぜなら、サンスクリット語には「言霊」が宿るという考え方があるから。言葉には霊力が宿るという「言霊」は日本独特の概念です。サンスクリット語も同じように、神聖な言葉とみなされていて、その音に神秘的な力が宿っているのです。

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弁財天様の元の神様として以前紹介したサラスヴァティ様は、言葉をつかさどる女神としても崇められています。

だから、声に出すほうがいい! 言葉の意味は分からなくても、音の響きを感じてもらえればいいかなと思っています。

私のブログタイトルに入っている「Shanti=シャンティ」もサンスクリット語光、平和といった意味合いです。言葉の意味だけではなく、音の響きも好きで、ブログのタイトルに入れました。

ところで、日本の言葉にサンスクリット語起源のものがあります。
例えば「お盆」。正式名は「盂蘭盆(うらぼん)」で、これはサンスクリット語の「ウランバナ」から来ています。仏教用語サンスクリット語起源のものが多いのですが、それだけではありません。なんと「旦那」「アバター」もサンスクリット語から来ているそうです。

また日本とインドのつながりを知って、私はひとり嬉しくなったものです。


次のブログは、「琵琶の名曲紹介④ お酒好きの武将・黒田武士」です。
(2022年3月5日更新予定)

平家物語のアニメを見て「平家物語」の奥深さを痛感

こんにちは。薩摩琵琶奏者の中尾掌水、
ヨガインストラクターのゆうこです。
普段は書籍の編集者として働いています。

今年1月12日から

TVアニメ「平家物語」公式サイト

がはじまりました。

フジテレビでは毎週水曜24:55~の深夜枠で、動画配信サイト「FOD」などでも配信されています。

キャラクター原案は漫画家の高野文子さん。人物にも景色にも、奥深い美しさ、そして優しさがあふれています。

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底本は、作家の古川日出男さんが現代語に訳した『平家物語』(池澤夏樹個人編集 日本文学全集/河出書房新社)。とても意欲的な本です。ベッドサイドにおいて、ちまちま読んでいます。

主人公は孤児の女の子。びわ」という名前で、琵琶の語り手です。縁あって平重盛の館に住むことになります。このびわという少女と心を通わせる相手に重盛を設定したのは、なんともうまいなあと思いました。

重盛は平清盛の長男。清盛が傍若無人な悪役としてよく描かれる一方で、重盛は平家一門の良心と言われるほどの人物です。唯一、清盛に意見できる豪胆な人でもありました。

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ちなみに、この重盛にはちょっと変わった設定(びわの特別な力にも共通している)が。これが結末にどう絡んでくるのかも気になります。歌川国芳「小松内大臣重盛」

びわは重盛の息子・維盛や、のちの建礼門院・徳子とも親しくなりますが、このふたりも平家一門が衰退する中でのキーパーソン。アニメではていねいに性格が描写されています。ふたりの行く末を知っていればこそ、今後の展開が楽しみです。

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歌川芳虎「大日本六十余将」の維盛です。

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水野年方が描いた寂光院(徳子)。

「琵琶といえば平家物語」、「平家物語といえば琵琶」というように、琵琶と平家物語は切っても切れない関係。平家物語」は今から800年も前の話で、平家一門の栄華と滅びがつづられていますが、どちらかといえば、滅びの方が話の筋。

こうして現代のアニメとしてよみがえった平家物語を見ると、単なる歴史物語ではないことをつくづく感じます。現代の我々にも訴えかける、本当にメッセージ性の強い物語です。

時を超えて語り継がれている物語には、魔力にも似た強い魅力があるのでしょうか。その重要な担い手に琵琶法師の存在がありました。そして、その琵琶法師の系譜の端くれに自分が立っていることに、心が震えます。

次のブログは、「インド版“言霊”サンスクリット語の魅力」です。
(2022年2月26日更新予定)