こんにちは。薩摩琵琶奏者の中尾掌水、
ヨガインストラクターのゆうこです。
普段は書籍の編集者として働いています。
4月22日(土)に開催する琵琶演奏会「薩摩琵琶を通して味わう日本の美しい言葉」(@市田邸)で予定している「羽衣」の魅力についてつづります。
琵琶の語りはちょっと古い言葉が多くて、聴いているだけでは分かりにくいものがあります。でも、本当にいい言葉ばかりなんです。口に出すと、何とも言えない心地よさに包まれます。それを知ってほしくて、この演奏会を計画しました。私が書籍の編集者なので、思いついたテーマとも言えるかも。
「羽衣」は天女の羽衣伝説をベースにした物語。『丹後風土記』にも残されている古い民話で、能の演目としても有名です。
舞台は静岡県・三保の松原。松原が広がる海岸に、ドーンと富士山がのぞめる景勝地です。
古くから和歌に詠まれ、絵画の題材としても人気でした。
「羽衣」の季節は春です。朝霞がかかり、空にはうっすら月も残る、のどかな海岸。
“虚空に響く楽の声 妙なる薫り花降りて”
(空から音楽が響き、いい香りが立ち込めてきた)
このように、とても詩的な言葉で始まります。
そんな春うららかなある日、漁師・伯龍は、この世のものと思われない美しい衣を見つけ、持ち帰ろうとします。それは、天女が松の木にかけておいた羽衣でした。返してほしいという天女に対し、「天人の舞を見せてくれれば」と伯龍は言います。
そこで、天女は舞を見せることを承諾。返してもらった羽衣を身にまとい、優雅に舞いながら天へとのぼっていくのです。
“誘われ顔の舞姫が 左右さ、左右颯々と、たなびきたなびく三保の浦
浮島が原に立つ雲の あしたか山や富士の峰”
(天女が左右左、左右颯々と舞っていく。羽衣は浦風に棚引き棚引いて、三保の松原から、浮島が原を過ぎ、愛鷹山や富士の高嶺より上へ、天へと高くのぼっていった)
今も天女が「羽衣」をかけたという松の木(の3代目)があります。
春爛漫といった谷中の古民家・市田邸で、この「羽衣」の世界を堪能いただけましたら!
次回のブログは、「平家物語の悲劇“敦盛”の魅力」です。演奏会で予定しているもうひとつの曲「敦盛」についてつづります。(3月18日更新予定)